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鯛は日本文化に欠かせない魚|祝いの席から日常の食卓まで

2025.10.23

日本人にとって「鯛」は特別な魚です。お祝いの席に登場する定番であり、「めでたい」という言葉と結びつく縁起物でもあります。日常の食卓でも親しまれてきた鯛は、単なる食材を超えて文化や風習の中に息づいています。ここでは、鯛と日本文化の深い関わりをご紹介します。

鯛はなぜ“めでたい”の象徴なのか

「めでたい」と「鯛」がかけられた語呂合わせは有名ですが、それだけではありません。

赤く華やかな姿、堂々とした体格、そして日本各地で豊富に獲れる魚であることから、古くから人々に祝福の象徴として親しまれてきました。平安時代には宮廷料理にも登場し、江戸時代には獲れた鯛はいの一番に将軍家に献上されていたようです。

行事と鯛

お正月のおせち料理や赤ちゃんのお食い初めの時に用意する「尾頭付きの鯛」、結婚式の祝い膳、七五三や還暦のお祝い。人生の節目や年中行事に鯛が登場するのは、「幸福」や「繁栄」を願う意味が込められているからです。鯛を食べることは、単なる食事ではなく、家族や社会の絆を確認する儀式でもありました。

地域ごとの鯛文化

瀬戸内海は鯛の名産地として知られ、愛媛の「鯛めし」はその代表格。今治市など東予地方では、鯛をまるごと米と一緒に炊き込み、炊きあがった後で鯛の身をほぐし、ごはんとまぜて食べます。鯛の旨味がごはんに染み込み鯛の身の弾力と合わさり、非常に美味しい逸品です。宇和島市、西予市など南予地方では、タイの生の切り身を、醤油、みりん、卵、ゴマ、だし汁をあわせたたれに漬け込み、たれごと熱いごはんにかけて食べるそう。南予地方は漁場が九州に近く、昔から大分県や宮崎県沖の日向灘でも漁をしていました。その際、漁師が火を使えない船の上でも簡単につくれる料理として食べたのが始まりといわれています。華やかな鯛を使ったものを特に「鯛めし」と称するようになったとのことです。

愛媛県の鯛そうめん

他にも鯛そうめんは、愛媛県だけでなく香川県など瀬戸内地方で古くから親しまれているお祝いの場に欠かせない料理です。鯛を一尾丸ごと煮て、ゆでた素麺と一緒に大皿に盛り、鯛の煮汁をかけて食べる豪華な料理です。愛媛県の松山地域では、五色素麺を用いることが多く、神への供物になったといわれています。

縁起ものの素麺と魚の王者・鯛の組み合わせは最強のハレ食であり、鯛が白波の中を泳ぐように飾る豪華な料理のため、婚礼や棟上げ、還暦などの祝いに使われる事が多いです。婚礼では、細く長く幾重にも幸せが続くようにとの願いを込めた素麺と、めでたい鯛の組み合わせは、両家の親族がめでたく対面したことを祝うともいわれ、縁起をかつぐ意味合いがあります。

伊勢湾や紀伊半島でも鯛料理が盛んで、地域ごとに独自の調理法や行事食が受け継がれています。

また、関西では釣り文化と結びつき、クロダイ(チヌ)が庶民的な親しみを持つ存在に。

一方で、関東では祝い事にマダイが選ばれることが多く、地域によって鯛の存在感は少しずつ異なります。

海外から見た鯛

日本ほど文化的に鯛が重視される国は多くありませんが、地中海ではイシダイやクロダイに似た魚が食べられており、フランス料理やイタリア料理でも高級魚として扱われます。世界でも「美味しい魚」の代表格とされている点は共通していて、日本と海外をつなぐ食文化の一端を担っています。


鯛は、味わいの良さだけでなく、縁起の良さや文化的な意味合いを持つ、日本人にとって特別な魚です。祝いの席で華やかさを添え、地域ごとに多彩な料理として親しまれ、日常の食卓にも登場する。まさに鯛は、日本文化の中で“魚の王様”と呼ぶにふさわしい存在といえるでしょう。


鯛に関する記事はこちらにまとまっていますので、ぜひご覧になってくださいね!

参考文献
・藤原昌高(2010)『からだにおいしい 魚の便利帳』高橋書店
・西潟正人(2020)『改訂新版 日本産 魚料理大全』緑書房
・島津修(2018)『いちばんくわしい 魚のおろし方と料理』成美堂出版


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