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陸上養殖サバとは?なぜ今注目されているのか|天然サバとの違いと新しい選択肢

2026.01.27

サバは日本人にとって身近な魚ですが、近年「陸上養殖サバ」という新しい言葉を目にする機会が増えてきました。お嬢サバをはじめとしたブランド名とともに紹介されることも多く、「普通のサバと何が違うのか」「なぜ今注目されているのか」と疑問に感じる人もいるかもしれません。

陸上養殖サバは、サバという魚自体が新しくなったわけではありません。これまで天然ものや海面養殖が主流だったサバを、陸上で管理された環境のもと育てるという“育て方”の変化によって、流通や食べ方の幅が広がってきた存在です。
この記事では、陸上養殖サバの基本的な仕組みと、注目される背景、天然サバとの違いについて整理していきます。

陸上養殖サバとは

陸上養殖サバとは、海ではなく陸上に設けられた水槽や施設で育てられたサバのことを指します。海水を循環させながら水質や水温を管理し、餌や成長環境をコントロールすることで、安定した飼育を行うのが特徴です。

従来の海面養殖とは異なり、外洋の環境変化や天候の影響を受けにくい点が大きな違いです。これにより、年間を通じて一定の品質を保ちやすくなります。

なぜ今、陸上養殖サバが注目されているの?

陸上養殖サバが注目される背景には、いくつかの要因があります。

ひとつは、天然サバの漁獲量が年によって大きく変動しやすいことです。回遊魚であるサバは、海況や資源状況の影響を受けやすく、安定供給が難しい側面があります。

また、鮮度管理や安全性への関心が高まっていることも理由のひとつです。陸上養殖では、飼育環境を管理できるため、寄生虫リスクへの対策や流通管理がしやすくなります。こうした点が、飲食店や家庭向けの新しい選択肢として注目されるようになりました。

天然サバとの違い

天然サバと陸上養殖サバの最大の違いは、「育った環境」と「流通までの管理方法」にあります。

天然サバは、季節や漁獲海域によって脂ののりや身質が変わる一方、その時期ならではの味わいを楽しめる魅力があります。

一方、陸上養殖サバは、成長過程が管理されているため、身質が比較的安定しているのが特徴です。脂ののり方やサイズ感がそろいやすく、調理のしやすさという点でもメリットがあります。

味わいについては好みが分かれる部分ですが、「いつでも一定の品質を選べる」という点が、陸上養殖サバならではの価値と言えるでしょう。

陸上養殖サバは安全なの?

陸上養殖サバが注目される理由として、「安全性」が語られることもあります。管理された環境で育てられるため、寄生虫リスクを低減しやすい点は確かです。ただし、それは「何も気にしなくてよい」という意味ではありません。

魚である以上、適切な取り扱いや保存が必要な点は天然サバと同様です。大切なのは、「リスクを理解したうえで選択肢が増えた」という視点で捉えることです。

日本ではどこで陸上養殖サバが行われているの?

陸上養殖サバは、日本各地で同時に広がっているわけではありません。現在は、特定の地域で実証や事業化が進められ、それぞれの立地条件や目的に応じた形で取り組みが行われています。

鳥取県(日本海側)

日本海側では、鳥取県を拠点に陸上養殖サバの生産体制づくりが進められています。大手水産会社の関連企業が、閉鎖循環式の陸上養殖システムを用いてマサバの飼育を行い、小売や卸売向けの流通を見据えた取り組みを行っていることが報じられています。鳥取県岩美町で、陸上養殖されたお嬢サバがブランドサバとしても有名です。
海況や天候の影響を受けにくい環境で育てることで、品質を一定に保ちながら出荷できる点が特徴です。日本海側という立地でありながら、安定供給を目指す事例として注目されています。

福島県浪江町(東日本)

東日本では、福島県浪江町に設立された大規模な陸上養殖施設で、サバの飼育が進められています。この施設では、水質や飼育環境を厳密に管理することで、寄生虫リスクの低減を目指した養殖が行われています。
報道によれば、将来的には「刺身で食べられる品質」を想定したブランド化も視野に入れた取り組みが進んでおり、復興と新産業の両面から注目されている事例です。

このように、陸上養殖サバは単なる技術実験ではなく、地域の新たな産業としての位置づけを持ち始めています。

大阪府(都市部での実証事例)

陸上養殖サバの取り組みは、沿岸部だけに限られていません。大阪府内では、都市部に立地する企業施設において、完全閉鎖型の陸上養殖によるサバの飼育実証が行われています。
海から離れた場所でも生産が可能である点は、陸上養殖ならではの特徴です。将来的には、消費地に近い場所での生産・流通という新しい形につながる可能性もあります。

陸上養殖サバはどのように流通しているのか

現在の陸上養殖サバは、全国のスーパーで一斉に並んでいる状況ではありません。主に、以下のような形で流通しています。

地域ブランドとして限定的に販売されたり、特定の飲食店や業務用ルートを中心に扱われたりするケースが多く見られます。また、実証段階から商用化へと移行する途中にある施設も多く、流通量はまだ限られています。

その一方で、品質の安定性や扱いやすさから、飲食店を中心に評価が広がっているのも事実です。今後は、生産体制の拡大や流通網の整備とともに、家庭向けにも選択肢として見かける機会が増えていく可能性があります。

陸上養殖サバは「新しい食べ方」ではなく「新しい選び方」

日本各地では、天然のサバを地域ブランドとして育ててきた歴史もあります。
宮城県の金華さば、大分県の関さばをはじめ、各地で水揚げされるサバは、漁場や時期によって脂ののりや味わいに違いがあり、その土地ならではの魅力として知られています。

こうした天然のサバは、旬や産地を楽しむという価値を持つ一方で、漁獲量や時期に左右されやすい側面もあります。

陸上養殖サバは、こうした天然サバの魅力を否定するものではなく、状況に応じて選べる新しい選択肢として加わった存在といえるでしょう。


参考文献
・藤原昌高(2010)『からだにおいしい 魚の便利帳』高橋書店
・西潟正人(2020)『改訂新版 日本産 魚料理大全』緑書房
・島津修(2018)『いちばんくわしい 魚のおろし方と料理』成美堂出版


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